Art Column-Paysage&Le Pétale

絵画と花、幻想の庭で出会うとき
──《Paysage》と《Le Pétale》が描く、二つの夢

壁にかかる一枚の風景画と、風に揺れる一輪の薔薇。
もしそれらがそっと寄り添い、同じ世界を紡ぐとしたら──。
《Paysage》と《Le Pétale》、二つのドレスが誘うのは、絵と花が交差する幻想の庭。

《Paysage》は、17世紀のフランドル絵画をルーツに持つ画家、David Vinckboonsによる《Village Fair》をモチーフに、優しい自然の息吹と古城の静けさを纏わせた一着。
緻密なプリントに額縁の装飾が重なり、まるでかつて貴族の私邸に飾られていた風景画のよう。18〜19世紀のヨーロッパでは、自然を室内に取り込むため、花や森を描いた壁紙やタペストリーが流行し、「私的幻想庭園」が空間芸術として育まれました。このドレスは、まさにその小宇宙を身にまとうものです。
Xラインを描くリボンとシャンタンの光沢が時代の品格を添えながら、透明感あるシフォンが胸元から裾へと静かに流れます。カラーは、詩的な静寂を宿すラベンダーと、清廉な空気をたたえたサックス。どちらも、夢の向こうの風景へとそっと足を踏み入れる一歩を演出します。

一方、《Le Pétale》は、物語の中で咲き誇る薔薇のようなドレス。
名もなき庭園にひっそりと咲く一輪の花のように、可憐で優美。
幾重にも重ねられたシフォンは花びらのように柔らかく揺れ、レースとリボンが織りなす陰影は、まるで花の香りを視覚化したかのようです。胸元には繊細なリバーレース、ウエストには立体的なシフォンリボンがあしらわれ、甘やかな愛らしさの中に、構築美という芯の強さが光ります。
カラーは、頬を染めるように幸福感を咲かせるサーモンピンクと、澄んだ泉のように静謐で気高いミント。花の色が変わるたびに、その表情も、物語も、異なる印象を生み出します。

風景と花、絵画とレース、額縁とリボン。
二つのドレスは、まるで並べられた二幅の絵のように、異なる美を語りながらも、ひとつの調和の中に並び立ちます。
そこにあるのは、「幻想」という名の庭園。
あなたの装いが、その庭の風をそっと動かすことでしょう。

 

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