Illusion bleue-Art Cloumn

多彩な夜-『ローヌ川の星月夜』

 「私にとって、夜は昼間よりも色彩豊かに感じられる。」-1888年9月ゴッホより。

 静寂で多彩な青、煌々と輝く黄色い星、『ローヌ川の星月夜』、ゴッホが描いた最初の『星月夜』です。当時照明が少ないため、ゴッホは帽子の上に蝋燭を灯しながら、この絵を描いていたと言われています。そして興味深いことに、絵に描かれた北斗七星は実際現地で見えず、彼の想像によるものでした。「これは明らかに、アルルの町や町の南を流れる川の下流の上空に見える空ではない。なぜならおおぐま座は北天の星座で、北の方向にのみ見えるからだ」とフランスの天文学者が『ローヌ川の星月夜』について述べました。[i]

 貧困、体の衰弱、話ができる友達もいない、その孤独さと苦悩は遠い星と、情熱溢れた荒々しいタッチでしか表現できなかったかもしれません。

『ローヌ川の星月夜』1888年9月に制作され 現在パリのオルセー美術館に所蔵

オリエンタル-浮世絵に生まれた鮮やかな色彩

 ゴッホはその独特な色使いで知られ、その中でも浮世絵の影響がとても大きく、1886年、ゴッホは芸術の都パリに訪れ、すぐプロヴァンス通りで浮世絵を扱う店舗の常連客になりました。平面的な構図、鮮やかで大胆な色、西洋絵画から離れたオリエンタルな世界が彼の感覚を刺激し、インスピレーションを与えました。
 やがて1888年、ゴッホはパリを離れ、心に描いた鮮やかな「日本」を求めて、熱い南仏のアルルを訪れました。 

ゴッホが集めた浮世絵とスケッチ ゴッホ美術館所蔵

ゴッホが油絵で描いた浮世絵 ゴッホ美術館所蔵

肉体の孤独と魂の豊かさ

 ゴッホは生涯貧困や孤独と戦っていました。肉体は孤独でしたが、愛と希望を追求する勇気、魂が自由への憧れが彼の世界を豊かにしました。これこそゴッホが現代に生きる私たちに与えた教えであるかもしれません。

  「親愛なる妹よ...自分が醜く、老い、意地悪く、病んで、貧しくなるにつれ、より鮮やかな色彩、整った構成、輝かしい作品でリベンジしたいと思う…私たちは喜びと幸福、希望と愛が必要です。」ー1888年9月ゴッホより

 

[i]『ゴッホが見た星月夜 天文学者が解き明かす名画に残された謎』ジャン=ピエール・ルミネ (著)、 小金輝彦 (翻訳)、株式会社日経ナショナル ジオグラフィック、https://www.amazon.co.jp/dp/4863136110

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