優秀な画家は優秀な外交官にもなれる
バロック期の画家ルーベンスの人生は非常に面白いものでした。貧しい生立ちでしたが、画家、起業家そして外交官として成功を納め、運命の女神に恵まれた人間でした。ルーベンスは幼い頃から絵画を学び、イタリアに留学した時、マントヴァ公ヴィンチェンツォ1世・ゴンザーガに気に入られ、1603年に外交官として依頼し、スペイン王フェリペ3世にギフトを届けに行きました。
その後スペイン王女イサベルに宮廷画家として迎えられ、画家兼特使の人生を始めました。特に1627年からの3年間、ルーベンスはスペインとネーデルラント、スペインとイングランドの王宮を何度も往復し、肖像画や平和を題材にする作品を制作し、爵位まで授けられました。
アルブレヒト大公像と侯爵夫人ブリジダ・スピノーラ=ドーリアの肖像
成功な起業家-ルーベンスの豪邸工房
1610年、ルーベンスはイタリア式の邸宅をデザインし、弟子と助手を集め、自分の工房を作りました。
工房は大成功し、当時最高級の私的美術品収蔵場所となり、各国のコレクターや貴族から注文が殺到しました。国際的な名声も高まり、教会からの依頼も少なくありませんでした。
ベルギー、アントウェルペンにあるルーベンスの家
ルーベンスの愛溢れる晩年生活
ルーベンスは成功者として半生を送り、晩年には個人的な作品制作に専念しました。特に再婚相手であるエレーヌ・フールマンの存在は大きかったです。16歳の彼女は53歳のルーベンスと結婚し、此度のデザインでアレンジした木版画「The Garden of Love」も、二人の結婚を祝うための作品と言われています。
この木版画は油彩画の下絵で、ルーベンスの緻密なタッチが見られます。作品全体は牧歌的で、上流階級の紳士と淑女たちが楽しそうに過ごしている様子を描いてます。
画面左下の天使におされているカップルに注目しましょう。男は愛情溢れる表情で、女性の背中を支え、庭の中心に向かって歩いています。女性の目線は控えめで、軽く下を向いています。この愛らしいカップルはルーベンスと妻のエレーヌ・フールマンです。
ルーベンスは愛の神キュビット、花冠と松明を持つ婚姻の神、愛欲・純潔・美の三美神など、神話的な要素も入れました。まるで二人は神にも祝福されている様に見えます。
この作品はずっとスペイン王フェリペ4世の寝室に飾られていたことが知られ、ルーベンスと王家の強い繋がりも伺うことができます。
巨匠の緻密な筆使い、淡くて静かなブルー、原画の美を最大限に引き立てたデザイン「L'esquisse de Rubens」。これを選んだあなたもきっと芸術を愛する者でしょう。その繊細な感性に私たちは感動します。