" L'esquisse de Rubens-The Garden of Love" Art Column-ルーベンスのスケッチ-愛の花園

 本商品で取り扱われている絵画作品は、ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されている、ルーベンスの油彩画「The Garden of Love」の原稿に基づいて再現された木版画です。油彩画の方は今スペインマドリッドのプラド美術館にあります。

 ピーテル・パウル・ルーベンスはバロック期フランドルの画家であり、肖像画、風景画、神話画や歴史画など数多くの油彩画作品を残したと同時に、原画に基づいて作られた版画作品も多く制作しました。その数はおよそ2200点、うちに彼が直接かかわったのが約100点です。ヨーロッパではルネサンス期巨匠たちの作品や古代のローマ彫刻を版画で複製するトレンドは16世紀から始まりました。同時に画家たちも油彩画以外のメディアで自分の構想を伝達したいという意欲で、原画に基づく版画の制作が盛んになりました。ルーベンスが木版画に関心を向けたのも1630年代初頭でした。版画を原画のイメージにそっくり複製することは非常に困難の為、ルーベンスは生涯を渡り自分の原画を複製する版画家たちを監修し、そして各地で有能な人材を探していました。今回の商品で取り上げられた「The Garden of Love」の木版画はフランドルのバロック彫刻家クリストフェル・イェーガーとコラボしたものです。(ルーベンスは版画制作に対して非常に厳しい為、1623年に版画家のフォルステルマンによるルーベンス暗殺未遂事件という逸話もありました。)

 木版画「The Garden of Love」の構図は左右2つの部分に分けられ、人物が前景に押し出され、周りに天使が飛んでいます。絵の細部に注目すると、まず画面の左側から愛の神キュビットに押されて、庭の中心に向かって男女のカップルが歩いています。男性は作者のルーベンスで、若い女性はルーベンスの2番目の妻エレーヌ・フールマンだと思われます。ルーベンスの愛情溢れる表情から見ると、彼は非常にこの妻を大事にしていると考えられます。右手を妻の手にかけ、左手を軽く彼女の背中を支え、ゆっくり歩き、転ばないようの様子が見られる。エレーヌの視線は軽く下に向き、若き少女でしか持たない控え目さ恥ずかしさが見られます(この表情は油彩画の方ではさらに顕著である)。  

  次に右半分の絵に座っている女性たちを見ると、皆それぞれ表情が違います。左側に座る女性の隣に、キュビットがこっそり彼女に何かを話しています。彼女は視線を前に向き、キュビットが言っていることをしっかり考えているように見えます。



中央に座る女性は右側の女性の手をつかまえ、一緒に座りましょうと言っているような顔をしています。

そして画面の上に花冠と松明を持っている天使は婚姻の神です。

  一番右側にある三人の女性が立ち向かっている彫像は、愛欲・純潔・美の三美神です。このようにルーベンスの作品にいるすべての人物や物はそれぞれの考えや意味を持ち、非常に意味が深い絵になっています。

  この度デザイナーは皆さんに版画版の原稿の美に注目してほしいという願いで、このドレスを作りました。原稿でしか見られない線のタッチや表情を通して作者本来の性格や普段見られない一面を見ることができます。またこの版画の独特な淡い青とベージュ色が皆の心に一瞬の安らぎを与えることが出来れば、デザイナーにとっても大変嬉しいことです

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