"Mangeurs de beauté"-Art Column-マンジェル ドゥ ボテ-

1.現代美術家/ジュエリーデザイナー:Eimi Suzuki

 Eimi Suzukiは1993年に生まれ、幼少期から物作りや絵を描くことを好むため、10代の頃からアクセサリーと平面作品の制作をしてきた。その経験が現在の美術家としての歩みの原点となった。

 10代から運営していたアクセサリーをひとつのブランドとして大きくしたが、知識をより深めるため、それを一度閉幕し、文化学園大学造形学部ジュエリー・メタルワークコースに入学した。そして2022年夏にジュエリーブランド「eimiess」として進化し蘇った。

 金工作品やオブジェなどを手掛ける傍ら、彼女は救済、生や偏見、祈りをテーマとし、古典美術を現代に落とし込んだコラージュにペインティングを組み合わせた平面作品を作り続けてきた。20歳に初めての展示を開いた以降、徐々に活動領域が日本から国外へと広がり、 アートディレクションやファッションブランドとのコラボレーションの他、CDジャケットや 装丁の描き下ろしなど、多岐に渡って活動してきた。

2.魂に戦慄を:歪で美しい官能な世界

 解剖学のような生々しい内臓、肉に美しい神話、油絵と女体。歪さを感じさせるような空気感に、優しいアンティークのような色合い、そして考えを深ませる作品背後の意味。まさにスリルで、美と救済に満ちた女体、肉と神話の領域である。

 作品で登場したこれらのモチーフは、彼女自身の経験から生まれてきたものである。幼い頃から病を持った人と医療が身近にあったため、人体や内臓は彼女にとってとても近い存在だった。そのため、彼女は自分自身を愛せるように、病を持つ人(他人や自分自身も)を異質に扱わないという価値観を元に、体の中に目を向けるという発想が自然に生まれた。

 それ以外、Eimi Suzukiの作品では、神話や宗教を描く油絵も重要な存在としてよく使われている。かねてから「人体の内に、医療では解明できない何かが存在する」という思いが彼女の心に秘かにあった。その考えは宗教や神話絵画とのコラージュを通して表現されていた。

3.「Epicure Gourmet」:”美しいものだけを食べて生きる高貴な人達”

 ドレス”Mangeurs de beauté”はEimi Suzukiの作品「Epicure Gourmet」をプリントしたドレスである。「Epicure Gourmet」:”美しいものだけを食べて生きる高貴な人達”。これはEimi Suzukiが自身のペインティングを、名画と掛け合わせたコラージュ作品である。

 画面の中央に居座る高貴で美しい女たちは権力者の象徴。かつて英国で特別な食材と扱われていた白鳥、生々しい肉、首は皆珍味として、彼女たちを囲む。高貴で美しい女たちは、世の理に気を留めず、ただ美しいと感じたものを集め、そして口にする。”Manger”、他の命を頂き、自分の養分へ。命の最も野蛮的で基本の循環、また生命への最高の敬意。ドレープに潜まれる髑髏は、恐ろしい死の連鎖を想起させるが、その先に彼女たちの貪欲に満ちた魂を養える、美しい食の悦びがある


(左:高貴な女たち、右:白鳥、肉、首)
美は何、エレガンスとは何、
           すべて高貴な彼女たちが定義する。
価値感、規則、束縛を、
すべて皿の上へ。
銀のフォークとナイフの金属音と共に、
我らの饗宴が始まる。
髪の毛一つ、骨一本も残さずに、
花の甘美、肉の豊満、涙の苦味、愛の芳醇、
この世のすべての珍美を、
我らの腹のそこへ。
そして世界は至高の食の悦びで、
虹色に染まれる。
 
我らは美の暴食者。
我らはこそ美を定め、導く者。

 

4.ドレス”Mangeurs de beauté”

 大きく広がるプリント生地が緩やかな段差で、三段のフリルと融合することで、柔らかい生地にさらにパワーとボリュームを加える。動く度に一瞬で咲き誇る花つぼみのごとく、無視できない優美さと力強さを示す。その姿の出現と共に、空間と目線を占領する。レースブラウスと華やかなコサージュと合わせると、さらに豪華で高貴な姿を演出できる。

 胸元に大きく広がる、Violacé Grisé色のリボンに、シルバーのラメ感が帯びるシフォンで制作される。中身に形状記憶素材の使用で、如何なる境地に追い込まれても、決して優雅と尊厳を捨てない女王のごとく、凛々しく最高峰に聳え立つ。

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