ドリームズ・バイ・ザ・レイク - 最後の安寧
深くて、暗いバイユー地帯で、
空気までもがしっとりと、ゆったりとなっている。
静寂の下に、未知の危険が迫ってきている。
怯える馬、警戒する白鳥、
吠える猟犬、
大勢の部隊の到着を告げている。
湖の静寂がもうすぐ打ち破られる。
眠れる者よ、目覚めよ!
嵐がやってくる。
可哀そうな少女とその恋人は、戦火の中で離れ離れになってしまった。しかしその熱い心に眠る愛は暗闇を照らす灯しのごとく、彼女を愛しい彼を探す旅へを導いてくれた。何日も、何か月、何年も経って、彼女は静かなバイユー地帯にたどり着いた。周りは薄い霧に覆われ、蛙と小鳥の軽やかな鳴き声が聞こえ、時間はまるで止まったようにゆったりとなっていた。疲弊した彼女はこの現実と夢のさかいにある地で眠りに入った。
けれど、突然猟犬に襲われた白鳥のごとく、脅かされて逃げようとする馬のごとく、遠い地から危険がここに迫ってきている。起きろ!起きろ!そして逃げよう!長年続く戦火がまもなくこの地にやってくる。
三枚の絵
ドレスRêves au bord de l'eauのプリントは全部で三枚の油絵で組み合わされている。
アメリカのバイユー地帯、静かな水面、湿った空気、苔で覆われた樹木、黒に近い深い緑、画面中央の大木の下で若い女性が居眠りをしている。この背景として使われた絵はアメリカ人画家、ジョセフ・ラスリング・ミーカーが1874年に描いた「The Land of Evangeline」という作品である。この絵は詩人ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローの叙事詩「エヴァンジェリン: アカディの話 」(Evangeline: A Tale of Acadie)からヒントを得て制作されたものである。主人公のエヴァンジェリンと恋人が北アメリカでの英仏戦争で生き別れになってしまい、長年お互いを探し続けやっと再会したが、青年はもう亡くなり、その衝撃でエヴァンジェリンもまもなく死を迎えた。二人はともに葬られ、最後死で結ばれたという悲恋の物語である。絵の作者ジョセフ・ミーカーはアメリカ南北戦争で連合海軍に加わり、ミシシッピ川を巡回する砲艦に乗っていた。その後彼はルイジアナ州とミシシッピー州のバイユー、湿地帯の美しさに魅了され、その後ルイジアナ州に定住し、数多くの風景作品を残した。そのため彼はまた「ルイジアナの画家」とも言われている。
「The Land of Evangeline」
プリントの左右にまたそれぞれはフランス画家ジャン=バティスト・ウードリーが描いた「犬に襲われる白鳥」(1740)、とスウェーデンの宮廷画家、ダーフィト・エーレンシュトラールが描いたスウェーデン王カール11世の馬が配置されている。
「犬に襲われる白鳥」とカール11世の馬