"An Allegory with Venus and Cupid"- -Art Column-愛の寓意

 1.『愛の寓意』

 ドレス「An Allegory with Venus and Cupid」で使われている絵画作品はイタリア・フィレンツェの画家、アーニョロ・ブロンズィーノの作品『愛の寓意』(An Allegory of Venus and Cupid)です。この作品は約1545年に描かれ、イタリアメディチ家のコジモ1世が、フランス王フランソワ1世に贈られたものです。現在はロンドンナショナル・ギャラリーに収蔵されています。

 2.白と青のシンフォニー

 この作品が目を引くポイントは二つあり、まず一つ目はその華やかな配色です。描かれた人物の肌白さと、深みがあると同時に鮮やかなウルトラマリンとのコンビネーションです。ウルトラマリンは中央アジアから輸入されたラピスラズリという天然鉱石によって作られ、当時のヨーロッパでは黄金に匹敵するくらい高価で珍しい顔料でした。そのため、一般的に聖マリアやキリストのローブなどの宗教画でしか使われていませんでした。そして、画面の中央に描かれた愛の神キューピッドと美の女神ヴィーナスに描かれた冷感な白を見ると、日本人画家藤田嗣治が描いた乳白色の裸婦人を思い出します。象牙のごとく、大理石のごとく、まるで生身の人間から離れた冷たい透明な白が、ウルトラマリンの強烈な青さを引き立てていると同時に、その青さがまた肌の白をより鮮明に映しています。冷たいハーモニーの中の劇的な色の衝突、まさに白と青のシンフォニーです。

 3.モラル的メッセージ

 もう一つの特徴は、絵に描かれた美しい人物たちとモチーフに含まれる意味です。作品の中で、キューピッドが美しい少年の姿として登場し、ヴィーナスと口づけを交わし、左手で彼女の頭を支え、右手の指でその乳首を挟んでいます。ヴィーナスもそのキスに答え、右手でキューピッドの愛の矢を盗もうとし、左手に黄金のリンゴを持ちます。黄金のリンゴと画面左下に描かれている白の鳩は美の女神を象徴する重要なモチーフです。二人の動きに含まれた性的表現が露骨であるため、この作品はナショナル・ギャラリーの中で最もエロティックな絵の一つとも言われています。このような題材は、当時好色で悪名が高いフランス王の好みによく合っていたという解説もありました。そして、二人の右側に立ち、薔薇の花を振りかけようとしている少年は快楽の象徴で、右上に砂時計を背負っている老人は時の擬人像です。

キューピッドとヴィーナス 

白い鳩、黄金のリンゴ

 美しい人と愛欲は人をそそるが、その美の下に時に醜いものや、危険も潜んでいます。その表現は中央人物たちの影に描かれています。左側のキューピッドの影に、髪を掴み、叫んでいる老婆が描かれ、これは嫉妬、或いは当時流行っていた性病、梅毒の象徴ではないかと推測されています。その反対側に、薔薇の花を持つ少年の影に、緑のドレスを着ている美しい少女が描かれています。甘い微笑み、大理石のような白い肌、ヴィーナスのような黄金色の髪に真珠の飾り、右手に甘味と誘惑のハニーキューブを差し出しています。だがよくその体の部分を見てみると、彼女の左手にサーペントのような刺がある尻尾を持ち、足はライオンの足だった。少女はまさにスフィンクスのように美貌で人を騙し、やがて死へ導く怪獣です。その美と悪の両面性は着ているマントでも十分に表現されています。マントの明暗はカンジャンテというルネサンス期によく使われている手法で描かれ、マントの明るい部分は淡い青色、暗い部分はピンクという違う二色で描かれています。このように作品では配置された人物、それらの関係や表現方法で、視覚的な楽しみを与えるだけでなく、モラルの面で豊富な意味合いが込められているのがその見どころの一つです。

老婆とサーペントの少女

 この度のドレスのデザインでは胸元とスカートのエッジに額縁を入れ、ドレス全体を名画のようにデコレーションし、それを着ているあなたを、ルネサンス後期絵画のドラマティックさと華やかさへ導きたいと心から願っています。そして白のブラウスや真珠の飾りなどで合わせば、ドレスのヴィヴィッドな青を生かし、より上品でエレガントなコーディネートができます。

Back

日本語