The National Gallery✕Juliette et Justine- -"Flowers in full bloom"- -Art Column-

Flower in a vase-最高の仮面舞踏会

 ドレスFlowers in full bloomのプリントで使用された絵画作品は、ナショナルギャラリーに収蔵されたポール・セオドア・ヴァン・ブリュッセル(Paul Theodor van Brussel)の作品Flower in a vaseである。

Paul Theodor van Brussel,Flower in a vase


 画面全体は多様な花で構成され、所々に蟻、蝶々のような小さな昆虫も花びらの上に施されている。花瓶の右下に繊細に描きこまれた鳥の巣、背景から薄っすら見えてくる森の様子、絢爛華麗の中に、ワイルドで大自然な味わいが混ぜられた作品であった。しかし、この一見自然極まりで、無造作なブーケが実は丁寧にデザインされた後のものである。

鳥の巣と作者のサイン
背景の森、昆虫

 まずはその構図である。主役である最も高価な花、青いアイリスが垂直なラインで花瓶の真ん中に差し込まれ、左下のピンクのバラから右上の黄色いチューリップが右上がりの一直線沿いに配置され、お互い安定した構図になっている。その上周りに弯曲の茎や小さい花が分布し、画面全体に膨らみを作り、秩序の中にアーティスティックな乱れさを生み出すことができた。
 次はその花である。実は作品に選ばれた花たちは同じ時期に咲いたものではなかった。ブリュッセルはそれぞれの花たちが入手できる時期に、咲いている姿をスケッチし、そして必要に応じて組み合わせた。このFlower in a vaseも彼が巧みに計算した人工的な結果である。
 作品Flower in a vaseはまさに最高の仮面舞踏会である。にぎやかな雰囲気、豪華極まりの舞台。主役たちがミステリーな仮面をかぶせ次々へとと登場する。赤くて情熱的なもの、エレガントで冷たい青を身に纏うもの、白とピンクのキュートなもの。皆本当は何者なのか、どこから来たのか、それを知る物はいない。目の前にあるのはただこの気持ちよく乱れ、嘘と秘密に満ちたショーだけである。ブリュッセルの絵は、豊かな自然への賛美歌であると同時に、巧妙な欺瞞に満ちた幻想でもあった。

花の静物画-富と教養の象徴

 作品Flower in a vase1600年代前半にオランダでブームとなった静物画というジャンルに属する。その発展を促進したムーブメントは主に二つあった。一つ目はネーデルラントでの植物学の繁盛である。海上貿易の盛んと共に、海外から持ち込まれたエキゾチックな植物への関心が高まり、園芸や花への品種改良などの研究も多くなってきたため、植物画も徐々に人気を集めてきた。
 二つ目は商業の発展による裕福層からの需要であった。珍しい品種の植物を描いた絵をコレクションとして集めることが、当時の貴族、上流階級、裕福な商人たちにとって、自分の財力と高い教養を世間にアピールする上出来な手段であった。中でも中国の磁器、ヴェネツィア製ガラス製品、銀製のカップやトレー、ジュエリー、珍しい果物や植物など高価な輸入品を描いた静物画を居間に飾ることは大ブームだった。大輪のバラ、青いアイリス、満開のチューリップ、画家たちも顧客の欲望と虚栄心を満足されるため、季節問わず、見つけれる限りの花を一枚の絵に集め、慎重に構図と色を計算し、その巧みな腕で豪華極まりの作品を次々と作り出してきた。

ロマンチック・チュチュ-夢のような軽やかさ

 ドレスFlowers in full bloomの形はバレエチュチュに由来し、特に19世紀のロマンチック・チュチュからの影響が強い。19世紀のフランスでは、ロマン主義文学の影響でバレエが急速に発展し、妖精やファンタスティックなものを扱う題材が人気を集めてきた。この夢のような世界の軽やかさを舞台で表現するために、ベル形のロマンチック・チュチュが生まれ、また女性が肌を露出するタブーも弱くなりつつ、透明で肌が見える素材も徐々に採用された。当時これを着ていたダンサーたちの美しさを忠実に記録した絵画作品を思い出すと、パリっ子のエドガー・ドガの作品に他ならない。

エドガー・ドガ,The Rehearsal of the Ballet Onstage

 ドレスFlowers in full bloomには、鎖骨までの丸い襟、程よく膨らんでいるパフスリーブ、胴体の曲線に合わせた胸元のハート形ライン、首のラインをダンサーのように長く見せると同時に、宮廷貴婦人のエレガントさを与える。腕の部分には菱形模様の透明素材で作られ、手のひらまでの長さが女性的魅力をアピールすると同時に控え目な優しさを与えた。手元に満開の花びらのように膨らんでいるラッフルとスカートのチュールが一致し、ドレス全体に軽やかで柔らかな質感を生み出している。昔のバレエダンサーたちはよく真珠を身に付け、当時のダンサーたちのエレガントさを再現するため、ドレスでは背中と手首の所に真珠の質感のボタンを採用した。
 Flowers in full bloomを着て歩き出すと、ドレスは体の動きに合わせて自然に揺らぎ、舞い上がるバレリーナのごとく、花園で戯れている妖精のごとく、軽やかで優雅なステップを踏み、明るく、かわいらしく、美しいというシルエットを与えることができる。

ドレスFlowers in full bloom

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